会長挨拶

 この度は東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞いを申し上げるとともに、被災地の皆様の一日も早い復興をお祈り申し上げます。

 さて、社団法人日本脳神経外科学会第70 回学術総会を、平成23年10 月12 日(水)から14 日(金)の3 日間、パシフィコ横浜を会場に開催させて頂きますこと、教室員一同大変光栄に存じております。主催者の在任地と学会場が異なるのは、昭和24 年、第5 回の荒木千里先生(京大)が東大内科講堂で開催して以来65 回ぶりになります。会員の先生方の学会参加の利便性を第一に配慮したためと御理解願います。

 第70 回学術総会のメインテーマは、『脳科学に基づいた脳神経外科医の研究と診療の検証と未来 -日本脳神経外科学会70 回の歴史をふまえて-』とさせて頂きました。その理由は、第70 回だからというだけでなく、政治、経済のみならず、医学も大きな変換点にかかったと考えられるからです。臨床医学、とりわけ脳神経外科学の発展は、この100 年にも満たない時代に起きたことはよく理解されていると思います。すなわち、自然科学のうち基礎科学解明が工学に応用され、あるいは工学機器の発展がさらなる応用科学に貢献し、社会が発展して来たのです。脳神経外科学においては、脳神経外科治療の発展にはその時代のEngineering 及びbiomedicine に基づいたScience を礎とした脳科学の発展に伴って診断、治療の発展があり、その時々の治療困難疾患のbreak through が生まれ、発展して来たと言えます。変換点での将来展望を見出すには歴史をひもとくことが大切です。そこで、日本脳神経外科学会70 回の歴史を鑑み、なにが今日までのbreak through を生んで来たか抽出してみました。日本脳神経外科学会創成期である研究会時代、その後の基礎科学や医工学に基づく診断・治療機器の発展とともに右肩上がりの成長を遂げた標榜科時代、世界をリードする現代に分け、その時代をよく知る先生方に御講演頂きます。さらに今後の希望を見出すため、脳科学、医工学に基づいた未来を展望することができる様に、最先端の研究をされている先生方に御講演頂きます。

 又、CT が導入されてからの脳神経外科学の進歩のスピードは驚異的です。そこで日本脳神経外科学会のsubdivision 毎に、この30 年を振り返り、向後の30 年の脳神経外科医療の目標を探るこ
とができる特別シンポジウムを組ませて頂きました。

 一方、社会に目を向けますと、昨今の医療を取り巻く現状は必ずしも明るいものではなく、様々な問題を抱え、医療そのものへの見方を変えなければならなくなったと言っても過言ではありません。現行の診療報酬を含めた医療制度は、適切な医療が制限され、後退している部分もあり、国民の幸せの為に、制度改善の働きかけの必要性を痛感している昨今です。そこで、この分野に理解のある鈴木寛参議院議員からの御講演を組みました。又、専門医認定機構への答、すなわち「脳科学に基づいた脳神経外科」の現況を表すエビデンスを探ることにしました。そこで、会員の先生方へ、脳神経外科医の診療の現状およびキャリアパスをアンケート調査させて頂き、「総合診療科」としての脳神経外科学会員の活動の実態を見てみます。

 また、今回は、第12 回日本分子脳神経外科学会を同時開催させて頂き、合同シンポジウムを企画させて頂きました。脳神経外科疾患(脳腫瘍、脳血管障害、脳・脊髄外傷、中枢神経の奇形、てんかん、パーキンソン氏病をはじめとする機能性脳神経疾患等)に対して分子生物学・細胞生物学の観点から、新たな創薬を含む、診断・治療法の開発・発展に結びつけられるようdiscussion を深めて参りたいと考えております。

 ニューロナース・コメディカルとのジョイントセッションも開催させて頂きます。脳神経外科医療は、周術期や急性期のみの管理だけでなく亜急性期から慢性期の予防治療に至るまで実に様々な診断・治療・管理を必要とする基本診療科です。看護師、診療放射線技師、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など様々な職種の方々との連携が必要です。合同セッションとすることで、脳神経外科治療の知識を共有出来ますので、会員の先生方の御参加をお願い致します。

 最後に、本年1月6 日、日本脳神経外科学の巨星として、日本及び世界の脳神経外科学会を領導された佐野圭司先生がお亡くなりになりましたが、佐野先生の日本及び世界脳神経外科学会への御貢献を称え、「佐野圭司メモリアルシンポジウム」を企画いたしました。AANSの代表Peter Black 先生、WFNS 代表としてのHee-Won Jung 先生に御講演頂きます。多くの先生方の御参加をお願い致します。

 本年度は、史上最多の2013 演題の応募を頂き、2005 演題を採択させて頂きました。海外、国内の指定演題を含めまして、総数2040 演題のご発表を頂くことになりました。日本の医療現場の忙殺状況を考慮すると日本脳神経外科学会会員のアクティビティーは、まだまだ健在です。会員諸氏のご努力にあらためまして敬意を表し感謝申し上げます。本会が参加される先生方の研究と診療のご発展に結びつきますよう、精一杯準備をさせて頂きます。多くの皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。


社団法人日本脳神経外科学会
第70回学術総会
(山形大学医学部脳神経外科・独立行政法人国立がん研究センター)
会 長 嘉山 孝正